日時 | 2025.05.31(土)10:00 ~ 16:10 |
---|---|
場所 | |
参加費 | 無料 ※セミナーテキストは申込いただいた方に無料でダウンロードいただけます(2025年5月ごろ予定)。 |
その他 |
各講演の概要は以下をご覧ください。 第47回(2025年)学術セミナーは東京会場での開催はありません。 |
京都大学 白眉センター 特定准教授
垣内 伸之 先生
京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 講師
横山 顕礼 先生
公益財団法人佐々木研究所 附属佐々木研究所 腫瘍ゲノム研究部 部長
中岡 博史 先生
日本赤十字社 福井赤十字病院 外科 副部長
西村 友美 先生
国立がん研究センター 研究所がん進展研究分野 分野長
吉田 健一 先生
垣内 伸之 先生Nobuyuki Kakiuchi
京都大学 白眉センター 特定准教授
学歴・職歴
横山 顕礼 先生Akira Yokoyama
京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 講師
学歴・職歴
中岡 博史 先生Hirofumi Nakaoka
公益財団法人佐々木研究所 附属佐々木研究所 腫瘍ゲノム研究部 部長
学歴・職歴
西村 友美 先生Tomomi Nishimura
日本赤十字社 福井赤十字病院 外科 副部長
学歴・職歴
吉田 健一 先生Kenichi Yoshida
国立がん研究センター 研究所がん進展研究分野 分野長
学歴・職歴
座長
垣内 伸之 先生(京都大学 白眉センター 特定准教授)
私たちの身体は約40兆個の細胞が集まって出来ている。これらの細胞の設計図はDNAの配列として細胞核のなかに記録されており、ライフサイクルを通じて細胞分裂の度に正確にコピーされ続ける。近年のゲノム解析技術の飛躍的な発展により、たとえ正常な細胞であっても細胞分裂の度に少しずつ遺伝子変異が蓄積することがわかってきた。体内で細胞同士は互いに増殖速度を競い合う関係にあり、遺伝子変異によって創出される多様な細胞の中で、しばしば、特定の遺伝子変異を獲得した細胞が周囲の細胞よりもたくさん増殖することがある。このような細胞集団(遺伝子変異クローン)は加齢や外界からの 影響によって増え、様々な臓器を再構築し、延いてはがんや慢性疾患の原因となることがある。従来考えられてきた、ライフサイクルを通じて遺伝情報は不変であるという概念を覆す、体細胞モザイクについて最新の知見を紹介する。
横山 顕礼 先生(京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 講師)
近年、がんのみならず、正常組織においても加齢や様々な環境因子への暴露によりゲノム異常が蓄積し、がんのドライバー変異を獲得した細胞がクローン拡大していることが報告された。我々は、正常食道上皮において、加齢に加えて、飲酒·喫煙により食道がんのドライバー変異クローンが拡大を来すことを報告した。口腔から咽頭、食道までは共通して扁平上皮で構成されている。これら3臓器では飲酒・喫煙は共通の発がんリスク因子で あり、また、同領域にがんが多発するフィールドがん化を呈することが知られており、食道のみならず咽頭や頬粘膜においてもドライパー変異クローンによる上皮のリモデリングが生じると想定される。そこで、飲酒や喫煙といった食道がんリスク因子への暴露の程度を頬粘膜に生じた遺伝子変異クローンの検出を通じて評価することを試みた。スワブで頬粘膜を擦過した場合、観察面積に対してドライバー変異のクローンサイズが小さく通常のシーケンスでは検出感度が不足するため、error-corrected sequencing (ECS)という最新のシーケンス技術を用いて高感度に変異クローンを同定した。食道、咽頭のクローン拡大とともに、頬粘膜のクローン拡大も含めた最近の研究成果を紹介する。
中岡 博史 先生(公益財団法人佐々木研究所 附属佐々木研究所 腫瘍ゲノム研究部 部長)
がんはDNAに変異が蓄積することで発生する疾患である。発がんメカニズムを理解するためには、正常細胞においてDNAが変化して腫瘍形成に至るプロセスを明らかにする必要がある。近年、次世代シーケンサーを用いたゲノム解析によって、様々な正常組織において、がん関連遺伝子の体細胞変異が加齢の過程で生じ、変異クローン由来の細胞が広く存在していることが明らかになってきた。発がんの数年から数十年前に、正常細胞においてがん関連遺伝子に体細胞変異が生じているという研究報告もある。つまり、がん関連遺伝子に体細胞変異を生じた細胞は、がん化には至らない状態で、長期間にわたり他の細胞と共存していると考えられる。がん関連遺伝子変異を有する細胞クローンが組織という三次元空間において蓄積・増殖するメカニズムには、組織の形態学的特性が関与していると思われる。演者らが取り組んでいる正常子宮内膜におけるゲノム解析について紹介する。
西村 友美 先生(日本赤十字社 福井赤十字病院 外科 副部長)
乳がんの発がんメカニズム、特に発がん初期の変化についてはまだわからないことが多い。我々は正常な乳腺の細胞の遺伝子変異を調べ、乳腺における変異の蓄積には加齢に加えて閉経・出産といった女性特有のライフイベントが影響を与えることを示唆する結果を得た。また、周囲に前がん病変を伴う乳がんに着目し、がんと非がん上皮それぞれのゲノム解析を行うことで、がんの進化の歴史を発がん初期から詳細に辿ることに成功した。これにより、der (1;16)陽性乳がんでは思春期前後にドライバー変異であるder(1;16)転座が獲得されたこと、der (1;16)転座を獲得した非がんクローンは数cm単位で拡大したこと、この拡大クローンの中から複数のクローン進化が起こり、その一部が発がんに至ったことを示した。乳がんの約20%を占めるder (1;16)陽性乳がんの特徴的な発がん様式の一端を明らかにし、乳がんの発がんメカニズムの解明につながることが期待される結果について紹介する。
吉田 健一 先生(国立がん研究センター 研究所がん進展研究分野 分野長)
近年のゲノム解析により、正常細胞は受精卵の段階から継続して体細胞性変異を獲得しており、その結果として各組織がモザイク状態にあること、またドライバー変異の獲得に伴うクローン性増殖が起こり、将来的な発がんにつながっていることがわかってきた。 正常気管支上皮においても、加齢に伴って変異が蓄積し、さらに喫煙によって1細胞あたり数千個の変異が増加していることが明らかになった。また、それに伴い肺がんで高頻度に認められるTP53などの遺伝子におけるドライバー変異も増加しており、肺がん発症と関連していると考えられた。一方、喫煙歴のある人、特に過去に喫煙歴のあった前喫煙者においては変異の数が正常に近い細胞も少なからず存在していることが明らかになり、喫煙などの環境因子によりダイナミックにクローン競合が起こっている可能性が考えられた。本講演では気管支上皮における体細胞モザイクおよび喫煙との関係について紹介する。
会員ページでは、シスメックス学術セミナーの過去講演動画の視聴やPDF版テキストのダウンロードが可能です。
視聴をご希望の方は「過去セミナー動画・PDFテキストはこちら」から登録フォームへお進みください。
「アーカイブス」ではシスメックス学術セミナーの過去のテーマや演題などを閲覧いただけます。