循環器病研究の未来展望 ー学術セミナーガイドー

「循環器病研究の未来展望」というテーマは、私たちの健康寿命にとって非常に重要です。
心臓病や血管疾患は、現代社会において最も深刻な健康・医療課題の一つとなっています。
循環器病研究を通じた医療技術の進歩により、循環器医療の未来は非常に明るいものと実感いただける最新情報を4名の専門医からご紹介いただきます。
循環器専門医の先生方はもちろん、検査技師の方々にも興味深く聴講いただける内容となっております。この機会にぜひご聴講ください。

■企画担当 平田健一先生より 第46回(2024年)学術セミナーの趣旨

シスメックス学術セミナーは、今回で第46回となる歴史ある学術セミナーであり、血液を中心に、がん、免疫、ゲノムなど最先端の研究をテーマとして開催されてきた。
がんの領域では基礎研究が進歩し、原因遺伝子が同定され、分子標的治療が可能となり予後が大幅に改善した。循環器疾患に対しても、ゲノム・オミックス研究を推進することで、その原因や病態を明らかとし、新しい診断法や治療法が開発されると期待される。また、家族性高コレステロール血症や心筋症、遺伝性不整脈などの単一遺伝子の異常で発症する疾患ではゲノム解析によって診断や治療法が決まり、個別化医療が可能となる。心筋梗塞や心房細動などの他因子が関係する循環器疾患でも遺伝要因が大きく関与しており、疾患発症のリスクを予測し、予防や早期の治療介入が可能となる。わが国における健康寿命の延伸を達成するためには、循環器疾患におけるゲノム、免疫・炎症、代謝、老化などについての基礎研究を推進し、バイオマーカーの開発や新規検査法、予防法の開発が期待される。
本学術セミナーは医師のみならず臨床検査技師をはじめとして海外も含めて多くの医療従事者が聴講している。
本セミナーが循環器病研究の未来展望について議論し、理解を深めていただく良い機会となることを期待している。

神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野 教授 平田 健一
トップページより、インタビュー動画も閲覧いただけます!
https://scientific-seminar.sysmex.co.jp

■平田健一先生からの講演紹介

■循環器病のいま

1.循環器病に関わる統計
我が国の死亡原因における循環器病の割合は、(令和3年(2021年)の人口動態統計月報年計(概数)の状況 )によると、心疾患は第2位、脳血管疾患は第4位であり両者を合わせた循環器病は悪性新生物(がん)に次ぐ死亡原因となっています。
出典:「循環器病に係る統計」(厚生労働省)/ https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/000649147.pdf
2.高齢化社会と循環器病・我が国の人口について
  日本は少子高齢化の局面を迎えており、2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になると推計されています。(出典:厚生労働省ホームページ/https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html
急速な高齢化の進展に伴い、高齢者に対する医療の重要性が高まる中、循環器病は急性期の突然死の主な原因かつ介護が必要となる主な原因でもあり、循環器対策基本法の策定により疾患の予防から治療、再発予防への取り組みが進められています。代表的な循環器病として、高血圧や狭心症、心筋梗塞などが挙げられます。
循環器病は、生活習慣病と密接な関係があり、喫煙や運動不足、高カロリーな食生活などが続くと、徐々に血管が硬くなっていき、血圧が上昇することで循環器病のリスクが高まります。また、循環器病は、年齢とともに発症する傾向がありますが、これらは加齢にともない血管が硬くなり、心臓の機能が低下することも循環器病の原因となるからです。
循環器病は、放置すると命に関わることもありますが、早期発見・治療すれば予後が良好な場合が多いです。
定期的な健康診断や、適切な生活習慣の見直し、医師の指示に従った治療を行うことが大切です。