血球形態ー骨髄異形成症候群診断の最新の改定(FAB/WHO)-2007年ー

John M. Bennett, M.D.
Professor of Oncology in Medicine, Laboratory Medicine and Pathology, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

骨髄異形成症候群(MDS:Myelodysplastic syndromes)は、腫瘍性クローン性幹細胞疾患の混成グループであり、形態学的な異形成と臨床的な骨髄機能不全を特徴とする。20年以上にわたり、FAB(French-American-British)システムはMDS分類のゴールドスタンダードであった。FAB分類を基にして構築されたWHO分類は、多様な治療法の選択手段としてのMDS分類の臨床的有用性を確立すると共に、MDS分類の予後評価のさらなる改良を試みている。本講演では、FAB分類とWHOのMDS分類の重要な差異に焦点をあて、WHO分類公表後の使用経験をより詳細に論じ、また、WHO分類の予後評価としての有効性に関する研究あるいは様々な治療法に対する臨床的反応の予測への適用に関する研究についても概説する。さらに、WHOの次版シラバス(2008年予定)に掲載予定のWHO分類変更案を紹介する。それらの本来の目的は変わっていない。つまり、それは支持療法の改善や自然歴に影響を与える急速に進歩する新しい療法が多様な国で比較できるように、以前に提示された無数の異なった定義に対して、統一された用語を提供することである。
一部の患者では急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)に類似した病状を呈するが、この疾患の本質はAMLとは異なり骨髄に多数の白血病性芽球は存在しないことが確認されている。この疾患は、3種類の主な細胞系(顆粒球、赤血球前駆細胞および巨核球)の成熟における変化と関連しており、その結果として汎血球減少を示したり出血や感染のリスクが増大したりするが、必ずしも急性白血病に進行するわけではない。FABワーキンググループは、これらの疾患にMDSという用語を適用し、共通の腫瘍性幹細胞から始まる共通の疾患、経路を呈することを示唆した。この幹細胞からの進化は極めて多種多様と考えられ、一部の患者では急性白血病にまで進行しないが、別の患者では急速に進行する。
芽球と前骨髄球の有効な鑑別法と共に、環状鉄芽球、巨赤芽球性赤血球前駆細胞、顆粒球の顆粒低形成/偽Pelger核異常ならびに小型巨核球などの末梢血液細胞および骨髄細胞の形態異常[異形成(dysplasia)という用語は、クローン性疾患であると同時に腫瘍性であることに由来する]の病理学的徴候について説明する。

造血幹細胞移植ー過去・現在・未来ー

慶應義塾大学医学部内科学血液内科
准教授 岡本 真一郎 先生

1970年代に始まった骨髄移植の臨床応用以来、同種造血幹細胞移植件数は年々着実に増加し、現在わが国では年間約2,000件の移植が施行されている。分子標的療法が治療の第一選択となった慢性骨髄性白血病を除くと、造血器腫瘍は現時点においても主要な移植対象疾患であり、中でも骨髄異形成症候群における適応は急速に増加している。また、高齢者に対する移植件数の増加も注目される。このような移植件数の増加(移植の適応拡大)には、骨髄非破壊的移植に代表される新しい移植技術の開発と導入、免疫抑制剤などの支持療法の進歩、新たに開発された移植以外の新規治療薬剤に加えて、造血幹細胞を効率よく提供し移植を迅速に施行するための環境整備(骨髄バンク・臍帯血バンク)が大きく貢献した。しかし、現時点で同種SCTによる治癒率は病早期で60-80%、進行病期で10-50%と必ずしも満足いくものではない。その成績向上を目指して、移植後同種免疫反応の選択的制御、免疫反応に伴う抗腫瘍効果の選択的増幅、移植変対宿主病以外の移植関連合併症の克服と個々の患者での合併症発症の予測、移植後の免疫再構築の促進について研究が進められている。

抗血小板療法のモニタリング

Alan D. Michelson, M.D.
Director, Center for Platelet Function Studies . Professor of Pediatrics, Medicine, and Pathology University of Massachusetts Medical School

抗血小板薬(アスピリン、チクロピジン、クロピドグレルなど)は、冠動脈疾患、虚血性脳卒中および末梢動脈疾患の治療に有効である。しかし、抗血小板薬に対する臨床検査上の反応において、患者(および健常ボランティア)間で差があることは、これまでにもよく知られている。そのため、心血管系疾患患者においては、抗血小板薬のモニタリング手段および臨床転帰の予測手段として、血小板機能検査が検討されている。小規模臨床試験で得られたエビデンスでは、抗血小板薬に対する反応の低下あるいは“抵抗性”が、後発する重要な臨床的有害事象と関係していることが示唆されている。しかし、血小板機能検査の結果に基づいた治療法の変更が、患者にとって有効か否かについては、まだ確定されていない。

造血分子機構と疾患

大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科
教授 金倉 譲 先生

造血幹細胞の複製、維持、増殖・分化、生存・死は、造血因子や周囲の間質細胞からの外的刺激が特異的受容体を介して細胞内に伝達されることにより制御されている。造血因子受容体の場合、その構造からキナーゼ型と非キナーゼ型に大別することが出来るが、キナーゼ活性を持たない受容体もJAKチロシンキナーゼを介して細胞内にシグナルを伝達する。この造血因子・受容体システムの異常は、造血障害や造血細胞の腫瘍化の原因となる。例えば、FLT3レセプターチロシンキナーゼ(RTK) やc-kit RTKの恒常的活性化変異は、急性骨髄性白血病に認められており、いずれも予後不良因子である。また、JAK2チロシンキナーゼの活性化変異は多血症などの骨髄増殖症候群に高率に認められている。本講演では、受容体、細胞内シグナル伝達分子、細胞周期制御分子、系統特異的転写因子、アポトーシス制御分子による造血の分子機構について概説するとともに、その破綻による血液疾患と最新の治療法の動向について述べたい。

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